大相撲九州場所で、ウクライナ出身の21歳の新進気鋭、関脇安青錦が見事初優勝を飾り、場所後に大関昇進を決めました。
幕内の平均からするとやや小柄な体格ながら敏捷で正攻法の力強い取口、技も巧みで切れ味も良く「この力士は強くなるな」と数場所前から思っていましたが、あれよあれよという間に特別な地位まで昇って来ました。
その取口や敏捷性・力強さは往年の千代の富士を彷彿させ、これから更に人気も高まって来ると思いますが、本人も大関は通過点であると言っていますので、このまま怪我等が無ければ、おそらく来年には横綱まで昇り詰める可能性も大いにあると考えています。
母国は現在理不尽な侵略を受け戦禍に巻き込まれていますが、その分、同世代の日本人力士に比べても覚悟や周囲への感謝の念は人一倍強く、それもまた向上力の源になっていると考えます。また子供の頃から相撲に馴染んでいた為に技も巧みであり、加えてレスリングの経験もある為に仕掛け技も豊富です。
母国から来日した時には角界に入門できる当ては全くなく、かつてアマチュア相撲で知り合った関西の大学の相撲部主将の家に居候して、角界入りへの糸口を一年近く探っていたとのことですが、人の紹介で会うことにした安治川親方も、紹介者への義理から会うだけは会って断ろうと当初思っていたものの、本人の目を見ていっぺんで気に入り、引受ける事にしたという事であり、人との縁を自分のものにする意欲と誠実さそして運の強さも兼ね備えているものと考えます。
来日三年目ですが日本語も本当に巧みであり、こちらも周囲が驚くほどの上達スピードの様です。
これから他の力士もその取口を良く研究して対抗策を練って来るでしょうから、今までと同じペースではなかなかいかないかもしれませんが、その心意気と貪欲なまでのプロ精神を以てすれば、いずれそれをまた超えて第一人者となる可能性を秘めています。
因みにしこ名にある青は母国の国旗の色という事ですので、同胞の期待を背負って臨むその姿勢に、これからも期待を込めて応援していきたいと思っています。


