新光産業株式会社

新光産業株式会社

社内ブログ

不可思議な金融取引

  • 2021.04.19
  • 投稿者:バーディー

株式市場は、相変わらず好調で、市場の雰囲気も楽観的です。別の表現で言えば、リスクに対して鈍感となって株価が暴落するリスクをあまり想定していないある意味で無防備な状態と言えます。 この様な楽観的なマーケットムードに支えられ、従来の伝統的な或いはオーソドックスな考え方からすれば、到底、理解し難い新しい取引が発生しています。

 

その最たるものが、米国で大流行の「SPAC」です。SPACとは「Special Purpose Acquisition Company(特別買収目的会社)」と呼ばれるもので、未公開の企業を買収するだけの目的で設立され、上場時に一般の投資家に株式を発行して資金を払い込んで貰い、その後有望と思われる未上場の企業を買収してその企業と合併して、会社の事業実体を決めるというものです。

上場時には株主から払い込まれた出資金だけがあり、中身(事業内容)が空という意味で空箱の上場会社と言われています。

 

上場時に事業内容が決まっていない何の会社か分からない株に投資する人がいるのかという疑問が湧きますが、このSPACの設立者は、著名な投資家や有名人が出資して設立され、2年以内に将来性のある未上場企業を買収すれば、実態のある立派な会社になるという期待感があるので、個人投資家も投資している模様です。

もし、2年以内に未上場企業を買収できない場合は、そのまま(空箱の)まま解散することになります(資金は金利をつけて返還される)。

通常、個人は、未上場企業の株式に投資することはできないので、このSPACを購入すれば、上場前に少額で投資できるメリットがあることになります(設立者が著名な投資家だから多分成功するだろうと思って投資するが、当てが外れると損失がでる)。

 

本来、株式市場に上場するということは、企業として社会的に一流と認識される記念日的な出来事であり、そのために証券取引所による厳しい上場審査があるのが原則です。

通常、業歴が一定年数以上あり、安定的な業績を計上し、その事業内容が社会的にも法律的にも認められる必要があり、そのため、証券取引所により上場数年前からの審査がされます。

その内容は、一般人が安心して売買できる様か否か等を基準に、財務内容や企業組織などの多方面に亘って細かくチェックされ、特に、その企業を創業した一族と会社との間に利益相反行為がないか(要は創業者一族が会社の資産を私物化していないか他)などが厳格に調査され、晴れて合格すれば上場認可が下りて実際の上場手続に入れるのです。

このように上場への道のりは、難関校の受験と似ていますが、上記のSPACは、この様な受験を省いて、SPACから買収されさえすれば、上場(試験免除合格)となるのです。

いわば「裏口入学」を認めているような感じです(設立メンバーは売り逃げて大儲けする例も多い)。

 

この様な不思議な会社が流行するのは、超金融緩和策が背景にありますが、それ以外にも、市場の番人である証券取引所そのものが上場企業となり、その株価を高めることが一番の使命になり、なるべく多くの企業を上場させ売買を活発化することで、取引所の株価が上昇し社長の給料は上昇するというメカニズムが働いていることから、上場審査や市場の規制はなるべく緩くする方向で自然と誘導される背景もある模様です。

 

本来は、市場規律を守ることや企業努力(受験勉強)して初めて晴れて上場(難関校に合格)するという価値が忘れ去られていると感じます。

「金融緩和の世界では儲ければ何でもあり」という風潮に、大いに危惧を感じている人は結構いるのでないでしょうか?

新光産業株式会社

〒160-0021
新宿区歌舞伎町一丁目2番3号

03-3232-0111

営業時間 9:00〜18:00 土日・祝日休み