新光産業株式会社

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社内ブログ

見えない川底

  • 2021.08.05
  • 投稿者:ご学友
2メートル程先の川中を進む従兄弟のやけに白い足裏を必死で追いかけていた。
無理!とてもじゃ無いが追い付かない!
時は1969年夏、場所は、刃物で有名(関の孫六)な岐阜県関市の長良川、孫六苑近くで、蛇行する川によって作られた淵の点在する辺りと記憶している。
当時中三の従兄弟の出立ちは海パン、素足、竹竿の先に銛付け、反対側に黒いゴムバンドの手製ヤスを片手に持ち、これに対し軟弱な東京者で小五の私は、海パン、水中メガネ、足ヒレ、手ぶらという出立。岐阜長良川は、昔も今も容赦なく太陽が河原の石を焼き、川から上り、冷えて濡れた足の裏でさえ、瞬時に熱湯に変える。自分の頭髪は確実にチリチリと音を立てて焦げていく。
口数少なく、東京者従兄弟の子守りを面倒そうに、着いて来れるか?と川の淵に向かって浅瀬を行き、ドシャバタと後を追う私の事などお構無しにズンズン進み、泳ぎ始める。
先を行く従兄弟がおもむろに淵の辺りで水面に垂直に潜って行くのを私は淵の始まる川岸の岩に掴まりながら必死で水中メガネで見ていた。
川の淵は透明度が高く、従兄弟が潜ってゆく姿が良く見えたが、よく見えすぎてしまい、恐ろしい深さに怖くなり、従兄弟が飲み込まれ、帰って来なかったらと思いながら、河原に上がり、呆然としてた。
ケンボウ、来なかったやん?大きな声で、川から上がって来たニコニコ顔の従兄弟の片手には、銛に串刺しになった1メートル位の立派な鰻があばれていた。今晩蒲焼きだな、食ったことある?
もう半世紀も前の記憶なのに、未だに毎年夏のこの頃になると、焼ける様な陽射しや、冷たい淵の水温、焼けた河原石を踏んだ足の裏の熱さなどをとても鮮明に思い出す。
やって来たぜ、今年も夏本番!

 

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